冒険譚の夢と「偽の成功」 – 前編|夢分析(D-7Q3 #03)

実際に私が分析してみた夢の紹介です。
この夢は少年漫画のプロットのような王道の冒険譚のように展開されていましたが、象徴として各パーツを読み取っていくと極めて深い意味を示していると読むこともできました。
その紹介です。
前回の記事の4種のアニマの読み方が実践されています。

皆さんも、夢の中に異性が出現したら、それが一体何を強調している存在なのかという点に着目すると、夢が象徴的に示す意図が読めてくるかもしれません。

今回は実験的に一つの夢と、その分析を前編後編に分けてみることにします。

前編である今回は、夢の記述と、登場人物の役割の整理まで行うことにします。


1.夢の本文

※今回は整理して提示することとします。

Scene 1:教会から抜け出した女

別の国の教会から、抜け出してきた女がいる。
教会と言っても、そこは教会らしい教会ではなく、機関の運用する施設の一つとしての教会だった。
俺はその抜け出してきた女と仲が良かった。

Scene 2:女の設定

その教会には、長の女に従うはずだった女が4人いるらしい。
そして、その4人のうちの1人が、俺と仲の良かった、あの抜け出してきた女だった。

Scene 3:絵に閉じ込められる

その抜け出してきた女は、絵に閉じ込められてしまう。
知り合いの専門家の女の助言で、なんとか延命はできた。
けれど最後は、助けることはできなかった。

※悲しい

Scene 4:参列と、おばあちゃん

参列の場面になる。おばあちゃんがいる。
嫌な予感がしていたが、やはりというべきか――
それは、絵に閉じ込められた女性の葬式への参列だった。
死を知ったのはこの段階。

Scene 5:黒幕(教会の女)

しかし、これは教会の女の仕業だった。
教会の女は倫理観が壊れていて、この町で超常関連のしのぎをするためだけに、
超常関連に詳しい専門家の女や、俺なんかを狙ってきたのだ。

※ここでいう超常関連とは、人が絵に閉じ込められるということ。

Scene 6:帰路、襲撃

専門家の女と帰っている時、家で襲撃にあう。
襲ってきたのは、教会の女の差し金の男だった。

※男はチンピラみたいなやつ。

Scene 7:影に出入りする男

その男は、影に自由に出入りできる。
俺たちは翻弄され、専門家の女がピンチになっていく。
そして俺は、仲が良かった女が死んだ失意の中で、ある可能性に至る。

Scene 8:可能性(確率操作)

彼女が死んだのは、相手の確率操作の能力のせいではないか。
ならば、能力者を殺せば、彼女をもとに戻せるのではないか――
俺はそう思い至る。

※倫理観が壊れた教会の女は確率操作の能力がある。

Scene 9:決断と刀

それを思い至り、失意から回復した俺は、影から襲ってくる敵を殺すことにする。
俺は刀を自由自在に操ることができた。
空間ごと斬る刀で、影の中に隠れる敵を殺す。

Scene 10:監視カメラ

しかし、倫理観が壊れた女は監視カメラでこちらを見ており、「まぁこんなもんか」と不敵にほほえむ。


2.第一印象

この物語を見て、最初にどういう印象を抱きましたか?
冒険譚の始まり、物語の第1話のような構成ですね。
そういった物語的な読みではなく、分析的な読みとしてです。

私がこの話を聞いて最初に引っかかったのは、教会に神聖性が失われていることの強調です。
夢を視覚的に見ているならば、教会は教会でしかありません。
組織の運用形態としての~の1文は無くても問題ないはず。にもかかわらず明言されていること、ここが引っ掛かりました。
そして、それはその直後の文言にも当てはまります。
教会に仕える女性が4人いて、そのうちの一人が脱走して、目の前にいる女性であるということ。

ここも、教会の神聖性の喪失と同じように、物語上、ここに差し挟む必要性がない文言です。
必要ないにもかかわらず、ここに入ってきた。だからこそ、非常に意味ある情報なのではないかと思うのです。

4という数字は、のとれた数の代表例の一つです。これが崩れていると夢は最初に前提を置いている。
教会の例に加えて、神聖の欠如、超越的な自己一体感が徹底的に排除されているのだと、私は見て取りました。


3.この夢の中心テーマ

第一印象から、私はこの夢の中心にある概念を、
『超個人的な中心を機能停止させると、代替物が中心席(座)を占有する』
と仮定して読み進めていくことにしました。


4.解説1:神聖性の失効

教会は神と人との接触がなされる神聖な場所です。
実情はともかく、教会という象徴が意味するのはそういうことです。
しかし、夢の中では機関が運用するもので、神聖さが失墜しています。
ただ、神聖がないのではなく、本来神聖さに溢れる象徴が神聖でないものとなってしまっている。
これがこの夢の全体にかかるテーマの一つです。


5.解説2:4の破綻

4は東西南北など、全体性に結び付く数字。
今回の夢の中では、不必要な部分にこの文言が入り込んでいます。
そして、この4人のうち、一人がすでに教会から離れていると述べる。
これこそ、全体性が現在不安定であることの示唆であると私は受け取りました。


6.解説3:4人の女性‐4つのアニマ

ここで、前回の記事の情報が生きてきます。

https://note.com/tack6556/n/nfe566c4b8e0b

男性の夢の中に、女性が出てくれば、それはおそらく、女性性が出現しているのだろうと置いて読んでいくのみです。
女性が2人出てきても、わざわざ、これらは4種のアニマのうちのどれかなぁ?と逡巡するのは無駄になることが多いです。大抵混ざっていますから。
しかし、この夢は4人も登場し、それぞれ明確な役割の差がみられます。それだけでなく、アニマの4種を無理なく当てはめることすらできました。これは非常に面白いことです。

登場女性を4人を整理し、4種のアニマを対応させていきます。

  1. 夢の中で自分と仲が良かった女性。
    この女性は夢の中では、教会から抜け出してきた女性であり、絵画に閉じ込められる不運なヒロインです。
    そして、この物語を冒険譚であると仮定したならば、この冒険の目的はこの女性を助け出すことです。つまり、成功のご褒美のような役割でもあります。
    この人は第1のアニマ「エヴァ」に相当すると思われます。エヴァは庇護してくれる存在、依存させてくれる存在、母としての女性像です。
    夢の中では一貫して、自分が助けるべき存在として機能していましたが、これはエヴァの反転のようなものです。自分が庇護する存在、自分に依存している存在(延命というのがまさに依存です)。
    エヴァは母と子の関係性としてのアニマです。関係が成立するなら矢印の向きは重要ではないのです。

  2. 教会の女性。
    倫理観が壊れていて、確率操作の力を持ち、超常関連のしのぎとしてこの夢に参入してきて、夢の中では討ち滅ぼす巨悪として位置する女性です。
    この女性は第2のアニマ「ヘレネー」に相当するのではないかと思います。
    ヘレネーとは美や性愛、成熟した女性の物理的な美しさや誘惑を象徴するアニマです。
    刺客(男)を差し向けた張本人であるという明言。さらに、夢の中で自分と、男が戦うのを監視カメラで見ているという構図。
    この構図は野生動物でも見られる、パートナーを得るためのオス同士の闘争を思い出させます。
    この二つの根拠から、夢の中で圧倒的な悪として君臨するこの女性はヘレネーだと考えられるのです。

  3. 老婆。
    葬列に参加した女性です。
    皆さんからはこの人をピックアップしてきた意味が理解できないかもしれませんが、その通りです。その点が妙なのです。
    葬列に参加する人間は一人ではないはずです。葬列なのですから。
    その葬列の中で「老婆」を一人指名して、わざわざ報告を行っている、記憶に残しているのです。
    だからこれも逆転的に極めて重要な存在であると考えられるのです。
    この老婆は第3のアニマ「マリア」ではないかと考えます。
    解説1で述べたように、この夢は神聖さを徹底的に取り下ろしています。
    そのために、神聖さと精神の高みの代表例であるアニマは、その二つを剥奪された形式で表されているのではないでしょうか。
    ゆえにマリアは神聖の“光”を削がれ、弔いの側面が前に出た形で出現したのではないかと思います。

  4. 専門家の女性。
    超常関連の話に詳しく、夢の中で自分に協力し、絵画に閉じ込められた女性を延命させるのに尽力してくれました。
    影の中を自由に出入りする男に攻撃されたりもする役回りでした。
    これは第4のアニマ「ソフィア」だと考えられます。
    ソフィアは名前の通り知恵や知識を搭載する女性像であり、女性らしさの強調はあまりなされません。
    夢の中ではこの専門家の女性は冒険譚に同伴し、自分自身を助ける役回りです。典型的な導き手であり、ソフィアのアニマなのではないかと考えました。
    そして興味深い点は他の3種のアニマは欠落や弱さが明確に描写されているのにもかかわらずソフィアだけはそういった描写はありません。
    ここから、この夢の報告者はソフィア的な女性性は限りなく統合に近い状態にあるのではないかと考えられます。


7.前編のまとめ

ここまでで、夢の本文を整理し、登場する4人の女性を「役割」として見える形にしました。
この時点で言えるのは、夢が単なる冒険譚ではなく、最初から「世界の前提(神聖の失効)」と「均衡の破綻(4の崩れ)」を、わざわざ明言しているということです。

さらに、4人の女性はそれぞれ機能が異なり、前回の記事で扱ったアニマ4相の枠組みに、無理なく当てはめられます。
ここまで配置が揃っている夢は、正直、珍しい。

ただし――配置が綺麗に揃っているからといって、物語が綺麗に進むとは限りません。
この夢には、冒険譚として読むと気持ちよく繋がるのに、分析として読むと「ここだけは見過ごせない」違和感が残ります。
前編ではあえて、その違和感の正体には触れません。後編で、確実に回収します。


8.後編予告

後編では、この違和感の正体を、次の3点から検証します。

  • 監視カメラが象徴するもの(偽の眼/偽の秩序)

  • 影に出入りする男が象徴するもの(境界侵犯としてのシャドウ)

  • 「空間ごと斬る刀」が統合ではなく切断になりうる理由

その上で、この夢が最終的に示している意味――
「偽りの目標(最良に見える選択が最良ではない可能性)」――を、全体の結論としてまとめます。


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関連リンク

  • 関連:アニマ4相の解説(前提)→[リンク

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